SSSS.DYNAZENON 第十二話視聴メモ[最終回]

4月の放送開始から2ヶ月ちょっと。全12話でダイナゼノンの世界にピリオドが打たれました。登場人物各人は自身の抱えていた憂鬱を越えて、各人が明日へと漕ぎ出したところで終幕。第10話で雑に決着をつけてしまった感じは否めないものの、余すことなく設定を使い切り、綺麗な終わり方をしたように思います。語りすぎることも無粋とは承知しつつ、ダイナゼノンについて今回も語っていきます。

 

 

第十二話:[託されたものって、なに?]

今思えばかなり露骨なタイトルだったように思うが、全体を振り返ってみても「分からなさ」を伏流にした作品だったなあと。最終回を迎えても分からないことばかり、語られないことばかり。敢えて語らないでシンボルを使ってそれとなく語りかけてみたり、敢えて全く語らなかったり。

 

語りあうことと語らないこと

物語の核は語られないまま、最終的にわかったのはぼんやりとした全体像だけ。大事な部分はそれとなく語りかける。想像力でもって補うことでようやく答えを得る。そういう作品だった。もっとも、ジャンプ的なアニメに世間が順応しすぎたせいでこういった作品が貴重に見えてしまうのかもしれないが……。

 

拳で語り合う終局

人間を殺すことを目指すオニジャに、怪獣使いとしてしか生き方を見つけられなかったムジナ、怪獣の世界の未来を見たいというジュウガ(ガウマとの過去に縛られていることも事実)がシズムのガギュラに融合。再び集結したダイナゼノン陣営の面々と拳で語り合う最終局面。

 似たもの同士だが違う道を歩み始めた暦とムジナ、かつての兄貴分に執着するジュウガと否定するガウマ、蓬・夢芽と何も語らないシズム。戦闘狂のオニジャはさておき。

 蓬が怪獣使いの能力の片鱗を見せた第八話の伏線もしっかり回収。最終話が近づくにつれて「ロマン」しか言っていないと思われるかもしれないが、展開といい、戦い方といい、幕引きといい、少年期のロマンがたっぷり詰め込まれたラスボス戦だった。

 

ガウマが大切にした三つのこと

ガウマの言う「世の中には絶対に守らなきゃいけないものが三つある。約束と愛と…」。第一話から、大事な局面でしばしばガウマが口にしてきた言葉だが、三つ目は直接的には語られないままガウマとのお別れが訪れる。

 ガウマを乗せたまま機能停止したダイナゼノンはゴルドバーンやグリッドナイト同盟と共に別世界へ。側で聞いていたはずの2代目も何も語らず。先述の「敢えて語らない」という描き方が用いられた部分。主人公の蓬はシズムとの対話の中で自分なりに三つ目を見つけるわけだが、それは後述。

 

自由って、なに?

最終決戦から三ヶ月後のフジヨキ台高校では文化祭が開催。蓬の1-3はホラーをテーマにしたカフェのよう。例によってクラスで浮いている夢芽はシフトをすっぽかして屋上の隅に。いつものメンツに急かされて、蓬は夢を迎えに行く。「連れてってよ」と夢芽が手を差し出したのを見て回想。

 最終決戦の時、怪獣使いの力を使う中で蓬はシズムと対話していた。「分からないものだね」「あと少しで無上の自由が手に入るところだったのに」と、自ら理を作って自らを縛りつける人間の不自由なあり方を否定。対照的に、蓬は(自らの自由でもって)「掛け替えのない不自由を手に入れるんだ」という答えを見つける。不自由であることに自分の生き方、人間らしさを見出したわけだ。

 一切の軛を取っ払った究極の自由。対照に不自由さにこそ生き方を求める姿勢。人間味にかけるアナーキズムと、人間味溢れる不自由と。両者平行線のまま話は終わる。「分からなさ」は抱えたまま、苦楽に向き合うことを決心する蓬。

 最終決戦といい、蓬との対話といい、シズムは多くを語らない。表情も映らず、感情の表出もない。蓬と対話するにあたっては背中を向けたまま。彼の思考には言葉で語った以上のものが含まれていたのだろうか?よく分からない存在のままシズムも退場する。どこまでも人間味に溢れていたダイナゼノン陣営の各人や怪獣優生思想の他3人に比べるとかなり異質な存在。「分からないものが怪獣」と語っていたが、(単純に怪獣の種を自分の中に隠し持っていたことだけではなくて)まさにシズム自身が「怪獣」なのだと感じさせる対話だった。

 

かけがえのない不自由/刻印

蓬が夢芽の手を取るシーン、蓬が初めて「夢芽」と呼ぶシーンに象徴的に「掛け替えのない不自由」が描かれる。「不自由」を選ぶ生き方を受け入れ、積極的に選んだ蓬や夢芽。孤独を恐れずに自分をさらけ出すことに決めたちせと、恩人という立場を利用しコネで社会に出ていくことにした暦(図太い生き方よねぇ)。そうした生き方を生んだのが、ガウマの巻き込みで経験した「不自由」であることも事実だ。

 怪獣との戦闘の中で自分が避けてきた過去や現在と向き合わざるを得なくなる。逃げ場も与えられず、ただ残酷に自分の「憂鬱」と向き合うことになる状況。 巻き込み事故の被害者ではあるものの、ガウマのお節介なまでの真っ直ぐさに助けられてきた面々、逆にそうした「憂鬱」がガウマを助けてもきた。「巻き込んでしまってすまない」「ありがとう」この言葉に12話の戦いの全てが集約されているように感じる。

 結局のところ、5000年後の現代に怪獣が出てきたのが、姫がガウマにダイナゼノンを託したせいか、それとも怪獣優生思想らの無念によるものかは分からない。しかしながら、姫の託した「不自由」であるダイナゼノンが、他の四人やグリッドナイト同盟の二人との出会いという形でガウマに救いをもたらしたのも確かだ。

 

 蓬、夢芽、ちせ、暦の四人が体験した「不自由」は刻印という形で彼らに残った。蓬、夢芽には、ガウマとお揃いの稲妻型の傷ちせは自らが刻んだ、親友ゴルドバーンのタトゥー、暦は直接的な形ではないが、タチバナや稲本さんに売りつけた恩という形で(苦笑)。ガウマの存在を心に刻んで、これから四人はそれぞれ苦楽を越えていくのだろう。

 ところで、ガウマ初登場の時の鳥の鳴き声と、最終話の河川敷で蓬の聞いた鳥の鳴き声は同じだったがあの対比は何を意味したのだろうか?

 

GRIDMAN UNIVERSEのその後

ガウマの絶命と共に機能停止し、ガウマの亡骸を入れたまま、ダイナゼノン(形態はダイナレックス)はグリッドナイト同盟の二人やゴルドバーンと共にハイパーワールド(?)へ。最後のカットでは機能が復活した状態でこちらに振り向く。OPで振り向くダイナゼノンとどこか似ている。画面が暗転してNEXT GRIDMAN UNIVERSE GRIDMAN×DYNAZENONの文字。GRIDMAN UNIVERSEには、まだ続きがあるようだ。

 ガウマの亡骸と魂が入ったままのダイナレックスは何に反応して機能を復活したのか、それからグリッドナイトと今後どういう戦いに繰り出していくのか、気になるところである。

 

 

この一連の記事を読んでくださった方がどの程度いるかは存じませんが、 もしいらっしゃったのであれば、最後までお読みいただき大変ありがとうございました。もしよろしければですが、SSSS.DYNAZENONへの感想などをコメントに書いていただけると大変嬉しいです。

SSSS.DYNAZENON 第九話&第十話&第十一話視聴メモ

私生活の方が忙しく、更新が遅れました。そもそも読者の方が本当にいらしたか、わからない記事ではありますが、復習程度の意味で見ていただけるとありがたいです。

 

 

 

第九話:[重なる気持ちって、なに?]

ちせの孤独が描かれ、あっけなく解決してしまった第九話。ちせの心と結びついた怪獣ゴルドバーンが生まれ、怪獣+超人+巨大ロボという漢のロマンの欲張りセットが実現。フタバと出会うも、夢芽の姉の死の真相解明は暗礁に乗り上げる。

 

ちせの孤独

ちせの抱えた「憂鬱」は居場所がないことの孤独だった。周りに馴染めず、教室で孤立。退屈そうに机に絵を描く。左腕に蝶(?)のタトゥー。アームガードの下にあるのが、実際にタトゥーなのか、リストカットをそれとなく象徴するものなのかはわからんが……。

 ゴルドバーンが生まれることでその孤独感はさらに加速。「心を理解する怪獣がいたらどうするか」とガウマに問うも、前話で怪獣を放置した結果として生じた被害、その苦い経験から今度は容赦はしない旨を告げられる。秘密を抱えて右往左往。

 

暗礁に乗り上げた真相究明の営み

かつての職場から連絡を受けて、フタバが蓬に会いにくる。夢芽と対面。

「香乃がいじめに遭っていたのは知っているか」「香乃は自殺したんじゃないのか」といった問いに対して、フタバは「噂は聞いたことはあるが見たことはない。認める人もいないと思う」「香乃は自殺なんかしない」「警察の人も事故だって言っていた」という煮え切らない感じの受け答え。夢芽が息を吸い込む音が怖い( ゚д゚)

 手元の結婚指輪。時計を見て帰ろうとするフタバ。「香乃とどうしてちゃんと向き合わなかったのか」という詰問に対しては「普通そう思うよね」と応じる。どこまでも自分の気持ちを語ろうとしない姿勢に視聴者もイライラ。どこか香乃の死から逃げようとする姿勢と同時に、心に抱えた後悔と闇の深さも感じる。今度の伴侶で同じ過ちを繰り返すなよ……。

 

夢芽とちせ

 真相解明も暗礁に乗り上げ、行き場のない悲しみとやりきれなさと怒りとを抱える夢芽。怪獣が現れ、出動しようとする蓬に対して「後で行く」。蓬は夢芽を置いてガウマ達の元へ。蓬、フタバの轍を踏んでるじゃねえか……。

 水門の上。一人で泣く夢芽(その背中がどこか前作のアカネに似ている)。そこに訪れるちせとゴルドバーン。姉の死を追っても何もいいことがなかったと言う夢芽に対して、本当に何もいいことはなかったのか?と詰め寄る*1

 「あの人、真っ直ぐ向かって来ましたよ」「アンタ、ゼイタクなんだよ」

 ちせが心に抱えた毒が表出。落下事故寸前のところをゴルドバーンに救出されたのちガウマたちの元へ。

 

怪獣と超人と巨大ロボと

 ジュウガの操るギブゾーグに苦戦するガウマとグリッドナイト。そこにゴルドバーンが現れ、危機を救う。今回、獅子奮迅の活躍のゴルドバーン。

 怪獣、超人、巨大ロボの欲張りセット「カイゼルグリッドナイト」で勝利。男の子ってああいうの好きなんでしょシリーズに入りますね。こういうの好きです、大好物です(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎

 

セルフの祭り

「みんなで戦わないと勝てない」「ちせ、お前もだ」。ガウマの力強い言葉を受けて、居場所を見つけたちせ。たった一話にして秘密が明らかになり、ほぼ解決。

 皆で祭り会場へ急ぐも既に誰もおらず……。線香花火やら飲み物やら食品やらを持ち寄ってセルフのお祭り。夢芽は一度帰宅し、すぐ帰ってくるとのことだったが遅い……。迎えに行こうと蓬が駆け出した先に夢芽。

 このエンディングの演出は正直憎いほど良かった。

 

第十話:[思い残した記憶って、なに?]

 怪獣の力を受けて、2代目とちせを除いて皆後悔のある過去へ。1クールで終わらせるために強引に過去に決着をつけた感じは否めない。怪獣優生思想、特にシズムの過去も気になるところではあるが特段の描写はなし。夢芽の持つアンクの知恵の輪が特に象徴的な話だった。

 

各人の後悔

ここでは登場人物各人が抱えた後悔について整理。夢芽については別の項(アンクの描写に関する項)で整理。

 

暦の後悔

稲本さんと向き合うこと、自分の気持ちと向き合うことから逃げてしまった過去。反実仮想にはなるわけだが、怪獣の作り出した世界の中で稲本さんと一緒に逃避行をしようとする。スクーターにニケツして海まで。

 バッグの中にあった一生遊んで暮らせるお金は海で散ってしまうが、「どうせ偽物」という稲本さんの言葉、稲本さんが自分に向ける笑顔に触れて、自分が執着してきたものに気づく。*2恐らくは、自分が稲本さんに向き合った証として、稲本さんの笑顔が見たかったのではないかと。

 

ガウマの後悔

現実世界に戻ってきた時に語られるが、姫にもう一度会いたいというのがガウマの願いであっった。優生思想の3人を斬り捨てていくが願いは叶わず。怪獣優生思想を斬るうちに「国に利用されるだけされて捨てられた」「裏切り」という語が出てくるが、恐らくは国家間の戦争にでも利用されたものと思われる。過去の回想においてシズムが出てこないことが非常に気になる(ボイスドラマではガウマを入れた5人での宴会の様子が描かれたが)。

 ムジナが消えた際には怪獣優生思想時代のガウマが見えていたが、怪獣優生思想の後悔は十中八九、ガウマと向き合う中で生じたもの。しかしながらシズムは違うように思うが……。

 

蓬の後悔

母の紹介で上条に会わなければという後悔。変えられない過去ではなく、今が重要なんだという思いから、自分の後悔については考えることをやめる。過去を反芻したり、反実仮想に浸ったりした他の人達とはかなり違う向き合い方。夢芽に水門の姉に会いにいくよう促したのも今を生きるためという意味が強いのではなかろうか。

 

ナイトの後悔

狂犬アンチくん時代を回顧。食品が映っていたように思うが、過去の飢えと現在のプライドが戦っていたのだろうか?

 

 

アンクの描写

 前作のラムネ瓶の中のビー玉や「・」のように、今作でヒロインを語る象徴として登場したのは、アンクの知恵の輪。ビー玉よりも直接的にヒロインの心情描写を担うものだった。最初に登場した時は姉の形見として、次第に姉の死による呪縛の象徴として機能してきたアンク。十話ではその役割が大きく変化。ここではOP、九話、十話などの描写を振り返っていく。

 OPにおいては黒のアンクを夢芽の手が、白のアンクを香乃の手が握る描写。十話の内容からするとかなり重要な伏線だった。九話までアンクが担ったのは、過去に縛られ懊悩する夢芽を描写することだった。

 九話において、水門から落下した際に夢芽が握っていたのは白のアンク。握ると同時に姉を思い出す夢芽。ここで色が持つ役割が明確に。黒が夢芽。白が香乃。

 十話では香乃から見たアンクの役割がそれとなく示される。人付き合いに不器用だった香乃は、相手に合わせられる器用な妹、夢芽に羨望を抱き、高校で奮闘するも空回りした部分が大きかった。妹への羨望に縛られる姉を描くアイテムとしてアンクが機能する。

 姉との対話を済ませた夢芽は遂に呪縛から解放される。同時に知恵の輪も解ける。最後のシーンで夢芽は再び知恵の輪を組み合わせ、白のアンクを見つめる。香乃との関係が呪縛から特別なものへと変化したことを示すもので、十一話の墓参りのシーンにおけるアンクの持ち方(二つの輪っかに指を通す持ち方)もこれを裏付ける。十話においては、白のアンクを見つめる構図と、水門で姉の香乃が黒のアンクを見つめる構図が対比されている。それぞれ持つ意味も違う。香乃があそこまでアンクに執着した理由は語られないままだけども、想像の余地が残っていてそれもまた一興。

 道具が人を語るという描写の仕方。それにより味わい深くなる作品。こういう細かいところにこだわるTriggerが大好きです。余談にはなるが、同じスタジオの作った『ニンジャスレイヤー』の絶妙な手抜きもよく考えられていて素晴らしい。作品にとことん向き合うのがTriggerの素晴らしさなのだと。ちなみにアンクの知恵の輪は7500円程度でグッズとして販売される模様。

 

第十一話:[果たせぬ願いって、なに?]

前回で強引な伏線回収を行なった怪獣ガルニクスが撃破されたことで怪獣の種が底をつく。その結果として怪獣のいない世界が実現され、ダイナゼノン陣営は日常へ、怪獣優生思想は解散。

 

怪獣優生思想の解散

ガルニクスが生じた時空間の歪みを通して様々な情動が引き出されるものの、怪獣の種は0に。戦う術を失った怪獣優生思想は必然的に空中分解。オニジャは自分の手で社会を壊す方向へ、ジュウガは怪獣のいなくなった世界であっても怪獣たちのためにできることを模索する方向へ、ムジナはすべきことを失う。そして残ったのはシズムのみ。「怪獣がいなくなると怪獣使いも普通の人間に戻る」との一言。

 後にオニジャは拳銃を奪おうと警官を襲うがあえなく逮捕。(自称5021)の文字には流石に腹を抱えて笑った。ジュウガはガウマに会いに行って今までの行動を咎められた上で殴られる(拳が悲しいほど痛くないという点にガウマの優しさと甘さが滲む)。ようやく見つけた生き方や目標を失ったムジナは、自分と似ていて生き方が定まっていなかったのに、今では先に進もうとしている暦に対して恨言を言いに行く。

 

怪獣のいない世界へ

戦う理由を失ったのはダイナゼノン陣営も同じであって、次第に日常へと戻っていく。ただ、ダイナゼノンに搭乗する以前と違うのは、各人が今まで逃げてきた問題と何らかの形で向き合うことを決めた点にある。

 暦は就職を始め(履歴書の中身がいかんせん寂しい印象)、暦の部屋にいられなくなったちせは中学へ、蓬と夢芽はいつも通り学校へ(夢芽は約束を破った相手にしっかり謝罪)。ガウマはカニ煎餅の差し入れを受ける、ただの優しい人に落ち着く(姫と会えず、姫が怪獣使いでない以上これからも会えないという悲しみは抱えたまま)。

 グリッドナイト同盟は任務を完了したということで、残された唯一のイレギュラーであるゴルドバーンを連れて、この世界から出ていくことにする。ちせに突きつけられたのは最近の心の支えであったゴルドバーンとの離別。合わせて、怪獣が出なくなったことで他のメンバーと会う機会がなくなり、せっかく見つけた居場所からも離れなくてはならないという状況。彼女にとってはかなり残酷に思えてくる。

 

怪獣の世界へ

蓬と夢芽は香乃の墓参りへ。実質的に義姉に挨拶に行くのと同じ……。帰りの河川敷で様々のことが明らかに。研究所からミイラがいなくなったニュースからガウマがそのミイラであることが明確に。

 なんだかんだあって、「ダイナゼノンに乗らなくなっても一緒にいる」「好きです。付き合ってください」という告白を蓬がしたところでシズムが襲来。身を挺して庇うガウマ。シズムの口からは、怪獣としばらく接続しなかったためにガウマが朽ちかけの肉体になっていることが語られる。ナイトがガウマの救出にかかるも一太刀も浴びせることは叶わず、シズムは自分自身を「掴んで」変身。己の肉体に怪獣を飼っていたことが明らかに。

 

怒涛の伏線回収

まずは朽ちかけの肉体という点であるが、風呂場や河川敷などでさらされたガウマのアザが次第に大きくなっていることはTwitterなどでも指摘する人の多い点であった。ガウマが死にかけであり、怪獣をつかむ力が弱まっている点も朽ちかけの肉体から説明がつく。

 次いで、今回はシズムに関する大きな伏線が回収される。「怪獣の言葉がわかる」という特性や、蓬や夢芽に付き纏っていた理由が、シズムの中にある怪獣から説明がつく。自身が怪獣であるが故に怪獣の言葉がわかり、怪獣を内に飼っているが故に、それを成長させるために様々の情動を感じる二人に付き纏っていた。ガギュラに変身する時に手のひらを自分に向けていることも象徴的だ。

 

未回収の設定

個人的に気になる(未回収だと思っている)設定は、蓬がザイオーンに対して怪獣使いの力の片鱗を見せたものだ。ダイナゼノンで普通にガギュラを倒したのでは、見方によってはかなり美味しいこの設定が破棄されることになる。シズムの過去は語られず、いまいち収まりの悪い印象になることは必至であるように思うが、この設定は果たして活きるのか。

 

最終回放送直前になってしまったが、こんな感じで。読んでくださる方がいるかは分かりませんが、復習程度に役立ったのであれば幸いです。

*1:そのシーンの前に夢芽に近づくゴルドバーンに対して、蓬のダイナソルジャーがタックル

*2:掴んだ札束を話す描写から窺える。すなわち、逃避行をすることではなくて、稲本さんから逃げてしまった過去、中途半端にしか向き合ってこなかった過去に縛られていたことに気づく

SSSS.DYNAZENON 第八話視聴メモ

今回は怪獣がどういうものなのかについてアノシラス(2代目)さんやナイト(アンチくん)から説明がなされました。ダイナゼノン陣営が怪獣を野放しにしてしまうという失態を犯し、ナイトがこれを叱責。「被害を出しそうになったら処分しろ」とナイトから指導が入るものの、蓬は怪獣とどう向き合うかで今後も懊悩しそう……。

 一方の怪獣優生思想は、ラウンドワンならぬグラウンドワンで諸々のアクティビティに興じたり、映画を見に行ったりと、遊び漬けの休日を過ごした模様。ますますよく分からない人達だことよ……。

※今回はかなり長いのでご注意ください。適宜目次を利用してご覧ください。

 

 

 

第八話:[揺れ動く気持ちって、なに?]

稲本さんと向き合う暦の心情や、怪獣との向き合い方に迷う蓬の心情が描かれた第八話。今回は二人の「懊悩」をキーワードに据えて物語を追っていきます。

 

1.暦の懊悩

丘の上の校舎、その柵の外にたたずむ暦。稲本さんがかつて立っていた場所で過去を反芻……。

 三話か、四話の「いいものを見せてあげる」で出てきたバッグの中身は大量の札束だった。札束を見せつつ「二人でどこか行こうよ」と誘う稲本さん。怖くなったのか建物を飛び出して逃げ出す暦。走る暦少年(当時中学生)を背景に、現在の稲本さんの声を重ねる。「なんで結婚したんだろ」「もっと夫のこと大事にしなきゃ」*1やりきれなさからか石を握って振りかぶる先にはガラス窓。中学時代の非行少女・稲本さんと同じ行為に及ぼうとしたところでちせからの着信。

 昼時の学校(元から廃校?)、暦は、態度のはっきりしない稲本さんとの向き合い方に懊悩する。前話の帰り際、飴を噛み砕く彼の表情はどこか清々しさを漂わせていたが、やはり過去の呪縛からは逃れられない模様。

 

2.蓬の懊悩

怪獣を捕獲した後、ガウマが怪獣を「掴もう」とするも失敗。戯れにちせ達もインスタンス・ドミネーション」の真似。流れで蓬も真似をすることに。他の人達に同じく、「掴む」ことに失敗したかに思われたが、刹那、動悸が起きて怪獣の中(回路と例の「真珠」)が見えた*2

 夢芽やその他一般人らが取り残されたショッピングモールに怪獣が迫った際には、建物の破壊を避けるために攻撃でなく、「掴む」ことを試みる。一時的に怪獣を掴み、制止できたが、怪獣は目をひんむいて蓬の方を見てくる。結果としてモールに大した損傷は生じず、怪獣もしっかり破壊できたものの、蓬は葛藤することになる(おそらくは「怪獣は本当に殺すべき存在なのか」等々)。

 

蓬の懊悩;怪獣に心?

蓬が今回抱いた大きな問いは「怪獣に心があるのか」である。蓬はナイトにこれを訊いており、ナイトは心を持った怪獣がいることを認めつつも「(ある怪獣に心があると思うのは単なる)錯覚かもしれない」「被害を出しそうになったら処分しろ」と諭す。しかしながら、どこか割り切れない様子。怪獣を撃破したのちに見せる葛藤も、蓬を見つめてくる怪獣に感情のようなものを感じたためであって、理屈としては理解できても感情の方でナイトの話を飲み込めない状況*3

 蓬に怪獣使いの力の芽生えが見えた今回。今までダイナゼノン陣営は「怪獣は倒すべきもの」として向き合ってきたわけだが、怪獣に心のようなものを感じてしまった蓬は今後その路線を外れると思われる。より具体的には、「怪獣による世界」を掲げる怪獣優生思想も、人間社会を守ること、大事なものを守ることを目指すダイナゼノン陣営も理解できる立場に蓬が置かれ、その間で揺れ動くのではなかろうか(もっとも優しい彼のことだから怪獣優生思想ほど極端にはならないだろうが)。蓬の懊悩は長引きそうだ。

 

 

その他ダイナゼノン陣営の動向:夢芽

蓬と夢芽は、姉・香乃の死の鍵を握る(?)フタバ先輩を探して、彼の職場を訪ねる。しかし辞職後であり、個人情報の問題を理由に連絡先はもらえず。不発に終わる。

 重たい気分を察してか、蓬は「どこか寄って行かない?」と誘うも、夢芽は無言のままバスの進行方向に目を移す。

 

 怪獣騒動の帰りのバスでは、今度は夢芽が蓬の気持ちを察して「どこか寄って行かない?」と誘い、蓬がこれに応じる。窓から差し込む光が蓬の顔を照らし、心なしか明るい雰囲気の蓬であった。互いを思いやる関係性、しかし一方で完全には縮まらない距離……、うーむ、じれったい。

 

:ガウマ

怪獣を檻に入れて夜の川を眺めているシーンで「あの人は生き物に優しかったな」と過去を振り返る。「姫」はどこにいるのかや、守らなければならない三つのこと、すなわち「約束」「愛」「……」(不明)を呟いたところで寝落ち。

 「姫」というワード、包帯だらけの容姿、龍のオブジェから原作に出てきたミイラということが確定されるようだが、原作を見ていないのでよく分からん……(^_^;)。すまんかった。

 

:ちせ

ダイナゼノンの最初の戦いの時に土手の上で歪な真珠(バロックパール)を拾った。その真珠は話数を重ねるごとに変形し、前回は軸索が伸びてきた程度の印象だったものの、今回は明確に翼竜に似た形を形成。蓬の視点を通じて怪獣のコアがその真珠であることが明らかになった*4が、ちせのバロックは「怪獣」になるのか、はたまた「抗体」になるのか。

 

3.怪獣って、なに?

今回は、アノシラス(2代目)さんとナイトが怪獣について解説してくれた。この世界(コンピュータ・ワールド)における一般的な怪獣がどういうものなのかについては、概ね答えが与えられたと言っていい。ただ、その解説によって新たに生まれてきた謎もある……

 

怪獣はどこから来る?発生源はどこから?

 今回のアノシラス(2代目)さんやナイトの解説から

「怪獣には、発生源があり、そこに人間の感情が作用することで怪獣が育つ」

・「怪獣が頻出するのは発生源が(おそらくは怪獣優生思想によって)ばら撒かれたため」

「影響を与えた人間の心の成熟具合に応じて、怪獣の能力の良し悪しが決まる」

・「心を持つ怪獣もいるにはいる」*5

といったことが明確に。ガウマが「怪獣でもないのにどうしてそんなことがわかるんだ?」 と訊いていたが、お二人は怪獣なんですよね……。無言の圧力が怖い二人(・_・)

 ここで二つほど疑問が生じてくる。

・あの真珠から怪獣が生まれることは分かったが、では、あの真珠はどこから来るのか?発生源自体は自然に存在しているものなのだろうか?

どうして心を持つ怪獣が生まれるのか?ガウマは二人のことを怪獣と認識できていなかったわけだが、怪獣とそれ以外の線引きはどこにあるのか?

 

怪獣一般とその他の線引きはどこに?

前項で新たに生じた疑問のうち二つ目について掘り下げる。 今作に今までに出てきた怪獣は、怪獣優生思想に操られた怪獣、グリッドナイト同盟の二人、色を塗る怪獣。順に、心を持たない怪獣、心を持つ怪獣、心を持つか不明の怪獣に分類できそう。姿で分類するのであれば、人間態を持つグリッドナイト同盟の二人と、それ以外の怪獣という分類になるか。

 線引きの問題で鍵になってくるのはやはりナイト(アンチくん)。前話ではジュウガがグリッドナイトを掴もうとするも失敗。ナイトの出身は怪獣になるわけだが、なぜこれを掴めないのか?ナイトはハイパーエージェント的な活動をしているらしいが、公式サイトの分類は「???」になっている。その意味するところは何なのだろう?

 

怪獣使いの要件とは?

怪獣について謎が深まると同時に、怪獣使いについても不明な点が出てきた。ガウマは修行を積まないとできないと言っていたが、蓬は修行なしに怪獣使いの能力の芽生えを見せている。一方で、ガウマは怪獣を掴む能力がかなり弱まってきている。怪獣使いになるために必要なものは何なのだろうか。怪獣が生まれることに人間の精神が関わっていること、蓬が必死になった時に一時的に「掴めた」ことからすると、例えば、信念の強さとかになるのだろうか?

 

5.怪獣優生思想の動向

 シズムは怪獣を発見するも「ハズレの怪獣」と言い、その場を去る。その後は他のメンバーを遊びに連れ出して休日を遊び倒しているが、この意図がダイナゼノン陣営側を怪獣に接触させることにあるのは確かだろう。「操るには値しないが、革命のためにさらなるイレギュラーを起こす道具にはなりうる。だから怪獣優生思想のメンバーには敢えて知らせない。」、そういう判断があったのだろう。現に他のメンバーは怪獣の出現にすら気付いていない一方で、シズムだけは怪獣がグリッドナイトらに倒される様子などもしっかりと見ている。

 ムジナとオニジャは前回までの共同作業を通じて急接近。タラバマンに反応するという割とオタッキーな一面も見えた。前話でちせが読んでいた漫画雑誌に描かれたドンシャインといい、今回のタラバマンといい、円谷ネタも随所に見られる。

 

6.その他気になる点・余談

・OPにグリッドナイト同盟の二人とグリッドナイトの画が追加。合わせて、

「SSSS.DYNAZENON」公式サイトにコンセプトアート03.5が追加。主要人物が並ぶ中、画像の端、水門の下あたりに二人が佇む。

 

ロケーション

・今回も前作と重なるロケーションが幾つか背景として使用された。グリッドナイトが初めて登場する第六話以前は「前作とどこか位相のズレた別世界」であることを印象付ける意味があったと思われるが、これ以降は前作ファンへのサービスといった意味合いだろうか。前作は日常風景など見逃しやすいところに伏線を仕込んでいたように思うが、伏線だったりするのだろうか。

 以下、わかる範囲で前回と重なるロケーションを示す(記憶違いだったら申し訳ない)

 

ロケーション1.稲本さんと暦が出会した酒屋の前の路地/前作ではサムライキャリバーさんがラムネを斬ったところ?

 

 

ロケーション2.アンチがゴミ箱を漁っていたところ、六花と出会した場所(ここに関しては自信なし)

 

 

ロケーション3.跨線橋と水門(前作では霧の怪獣が街に溢れる様を眺めた場所/今作ではアンチと蓬が会話した場) 

 

 

 今回はここまで。長くなりすぎた…

*1:投稿者の記憶力は明晰ではないので細かいセリフの違いはご了承ください

*2:怪獣の中身に前作同様に回路が含まれることが分かり、任意のコンピュータ・ワールドであることは自明に。インスタンス。ドミネーションに関する第二話の考察を引き継ぐなら、蓬が世界の真理を見た可能性もないわけではない。但し、回収されない伏線(ちせの過去/ガウマの過去)や完結していない部分(稲本さんと暦の関係性/蓬の家庭問題/夢芽の姉の過去/怪獣優生思想との向き合い方)がまだ山積みであることから、尺の都合などを考えるに、蓬は、この世界がどういうものかを理解するメタ的視点を得て悩むまでには至らないのではないか

*3:怪獣や怪人に感情があるかというのはヒーローものでは頻出のテーマ。最近だと、『ウルトラマンZ』において、卵を守るために行動したレッドキング父母を見て以降、ハルキが類似の悩みを抱え、スランプに陥る。

*4:おそらく2代目の言う「発生源」

*5:これに関してはグリッドナイト同盟の二人が何よりの証拠

SSSS.DYNAZENON 第七話視聴メモ

誰も予想しなかったグリッドナイト(アンチくん)の登場によって締め括られた前回。物語にさらなるイレギュラーが投入されました。大人びたアンチくんに、垢抜けた2代目アノシラスさん、前作とのつながりができました。

 

今回は各陣営の行動原理・行動方針が明確化された回でした。以下、整理していきます。

 

 

第七話:[集まった意味って、なに?]

前回、怪獣優生思想の操るブルバインに大敗を喫した(ナイトくん曰く「不甲斐ない戦い」)ダイナゼノン陣営。機体が一部損壊したものの、グリッドナイトの加勢により、辛うじて生還。ダイナゼノン陣営に接触するグリッドナイト同盟、しかしガウマは協力を拒み……。

 

1.グリッドナイト同盟の行動原理

前作でヒーローに目覚めたアンチくんことナイトくん。かつて彼を介抱したアノシラス(2代目)さんと様々の世界をわたり歩いている模様。ハイパーエージェントになったのかは不明だが、怪獣に破壊されつつある世界を守ることが明確な目的としてある模様。

 

グリッドナイト同盟について(気になる言動/雑感など)

・グリッドナイト同盟の名称は、前作「SSSS.GRIDMAN」のグリッドマン同盟から引き継いだ模様(内海のクソダサネーミングが他の世界にも知られてしまったw)。

・前作の衣装の意匠を残しつつスーツでビシッと決めるナイトくん。立ち姿といい、剣の身に着け方といい、サムライキャリバーさんの影響がモロ出ている。前作視聴者にはたまらん。

→「見極めている」という発言からも、ヒーローとしてのこだわりや自覚が見えてくる。

・ナイトくんの「エネルギー配分を間違えた」旨の発言。今作でもアンチくんには活動限界がある模様。

 

・アノシラス(2代目)の「怪獣が現れると境界が弱くなる」という発言。今回の世界は十中八九自立したコンピューターワールドなので、境界の弱さ=脆弱性と考えるなら原作のようにハッキングのような手段でもって怪獣が生じる可能性も一応は存在(怪獣が育つのは人々の「憂鬱」によってであるから、内部的なバグとも解釈できる)。少なくともグリッドナイト同盟が世界に干渉できた理由にはなる。

 

・「フィクサービーム」は回数制限付き。加えて効果範囲も狭い模様。ナイトくんやアノシラス(2代目)さんには世界を再構成するだけの奇跡を起こす力はまだないらしい。

 

・ナイトくんの「怪獣のいる世界には抗体(antibody)のような存在が現れる」という発言。

→少なくともいくつかの類似した世界(自立したコンピューターワールド?)を渡り歩いてきたことが推測される。「抗体」という表現から、それらの世界で生じてきたのはグリッドマン的な外部の存在ではなく、世界の均衡を保とうとする内部の作用としての存在。この説明を用いるならば、ダイナゼノンが内部の存在であることは確定。5000年前の世界がコンピューターワールドに存在したことになるが……(独立した世界と見るなら違和感はないが、電脳世界の5000年前とは?)。

 

2.怪獣優生思想の行動原理

怪獣についてのシズムの説明を受けてから、過去の記事では「社会の軛(くびき)から人々を解き放つのが怪獣」という旨を主張してきたが、実際には彼らはその一歩先を行っていた模様。

・オニジャの「個人の感情で人を殺すのではなく、人間全員を殺す」旨の発言。

人間社会の破壊と怪獣のみの社会の形成が目的であることが示された。この発言の方向性からするに「怪獣使いは人間ではない」ということになる。怪獣でもなく、人間でもない中間的な「常識の外」の存在が怪獣使いなのだろうか?

 

・シズム「革命の前に敵が増えるのは普通」

→オニジャの発言に照らすなら、人間社会を完全に破壊することが「革命」になる。怪獣の頻出やイレギュラーが生じることが「良い兆候」、とするならば「革命」の時には怪獣が地上を覆い、凄惨な闘争が生じることになる。黙示録的?

 

・夜通し怪獣を強化していくムジナとオニジャ、側で見守るシズムと眠るジュウガ。ジュウガを見たシズムが「本当の怪獣使いは眠らない」と呟く。

→怪獣を掴んで操ることで、怪獣側に近づいた存在(「常識の外にいる」*1状態)になることを意味するのだろう。徹夜した三人(ムジナとオニジャ、シズム)は「怪獣使い」で、ジュウガはそうではないという分類になってしまうが……。まさかとは思うが、ジュウガの裏切りフラグ?

 

怪獣優生思想の不気味さ

第5回でビーチランドを満喫している様子などを見るに彼らは人間社会にかなり溶け込んでいるように見えるし、振る舞いにはある程度の理性が感じられる。しかしながら、以前の記事で指摘したように、その行動は恣意的でかなり行きあたりばったりなもの(怪獣の発生が偶発的なものであることを考えると仕方がない部分もあるが)。人間社会を楽しむ姿勢の裏で、「人間を全員殺す」ことを目標として掲げる。

 「思想」と「恣意」の対照性、人間社会の「破壊」と「満喫」という矛盾、「理性」と「破壊衝動」の両立。悪役としてはかなり気味の悪い部類ではないだろうか。

 

3.ダイナゼノン陣営の行動指針

ガウマの「バラバラだから出会った」という発言が印象的。個々人の目的がバラバラでも同じ方向を向いて戦うという姿勢。ナイトくんもこの言葉に刺さるものを感じたのだろう。

 

ガウマの生き方

ダイナゼノンを託した女性から教わった通りに感情を大事にして生きるガウマ。手の届かない所にいたようなその人がダイナゼノンを託してくれたことを「粋だろう」と語りながら男泣き。どこまでも真っ直ぐなガウマを作ったのは彼女なのだろう。

 

暦の葛藤

タチバナが戦闘に巻き込まれたことを確認し、助けに行く暦。自分の嫌いな人だという感情と、恐らくは、稲本さんが悲しむだろうという思いやりの間の葛藤。助けたところで自分に利益はない。それでも助けることを選択する。自らの思い人のために。稲本さんが「タチバナをもっと大切にしなきゃ」と言うのを電話越しで聞く彼の複雑な胸の内が察せられる。ちせから差し出され飴をガリっと一噛みで粉砕。やりきれなさと、過去と決別できるかもしれないと言う清々しさ。それから、思い人が悲しまずに済んだことの喜びが滲んでいるように思う。

 

蓬の愛情

「南さんの中にお姉さんがいるなら、それは他人じゃない。」

かなり強力な発言が出たが、それって実質的に告白じゃねぇか……。他者を自分のことのように思いやる姿勢。蓬の優しさと夢芽への愛情が見えてくる(愛情が重すぎる気もするが)。まさに麻中之蓬ですね。

 夢芽は蓬と一緒に再び姉と向き合うことを決め、センダフタバを探すことにしたわけだが、姉に縛られっぱなしの夢芽を蓬は支えられるのか。鳴衣さんっていう「お母さん」がいるからそう簡単に夢芽も挫けはしないとは思うが。*2

 

4.その他気になる点

・夢芽がアンクの知恵の輪に縛られているのは、香乃を失った過去があるから。では、香乃があれほど知恵の輪に執着した理由は何だろうか。

 ・ちせの手に入れたバロック(歪んだ真珠)から次第に枝か菌糸のようなものが伸びている。真珠は第一話でばら撒かれたものであることを鑑みるに、怪獣を生み出す目的で使われるのは間違いないだろう。では、ちせの持つバロックから生まれるのは怪獣か、それともナイトの言う「抗体」か。

 

 

今回思いつく限りではこの程度。次回以降の展開がさらに気になってくるところだが……。伏線を広げすぎるこのアニメ、果たして1クールで本当に完結するのやら。

*1:第三話についてのメモを参照

*2:ボイスドラマ第7.7回が素敵な内容(´;ω;`) 

SSSS.DYNAZENON 第六話視聴メモ

今までのヒーローものの王道展開から一転、通奏低音として流れていた各人の問題が再び現前する第六話。足並みの揃わないダイナゼノン陣営。対照的に、結束を深める怪獣優生思想。

今回は物語の鍵が幾つか与えられました。今回も私の気になる点を中心に拙いメモを。

 

第六話:[この切なさって、なに?] 

 

夢芽の「憂鬱」*1

OBから、「香乃は明るい性格で可愛がられていたが、男絡みで周囲から不満を抱かれるようになり自殺に繋がったのではないか」という旨の話を聞き、瓜田のとは別の非公開動画があることも知る。帰路、「お姉ちゃんのこと何も知らなかったんだな」と夢芽。

 ガウマに話した時は断固たる決意、という感じだったが……。件の動画を見て一変。

 

動画の内容

定期演奏会前のドッキリを収めた動画。内容は以下のようなもの。

 音楽室に香乃が入り、女子部員(金江?)から、荷物から抜かれた何かを探すよう促される。知恵の輪が無いことに気づき、心なしか必死になる香乃。雑コラのように現れる知恵の輪のシルエット。促されて、身を乗り出して開いた窓から下を見る香乃。そして、階下の地面に落ちている知恵の輪を拾いに行く。「ドッキリ大成功」と金江が言い、集合写真。笑う香乃。

 

→どこをどう見ても今時の悪戯な高校生の動画だが…(ノリは小学生のそれよなあ)。以下、気になる点を挙げる。

・必死で探す様子から、香乃にとってもアンクの知恵の輪は重要なアイテム(或いは男絡みのもの?)

・香乃の笑顔の意味は?(自分の感情を隠すために敢えて写真撮影の時に笑っていたとも取れる。少なくともこの時は楽しんではなさそうだが)

・物を隠すという行為の意味は?(次項)

 

物を隠すことの意味/動画を非公開にしたことの意味

物を探すように促すには、その物自体が持ち主にとって重要である必要がある。例えばティッシュや鉛筆のようにありふれたものを隠してもイタズラとしては不十分だろう。少なくとも、香乃にとって知恵の輪が重要なアイテムであることを周囲の部員は理解していたことになる。

 階下で知恵の輪を見つけた時、それは地べたに置かれていた。「窓から投げ捨ててはいない」とは言いつつも、他者の所有物の扱いがぞんざいすぎやしないか。度を越しているような気もする。

 香乃の恋愛を揶揄うような意味もあったのかもしれないが、香乃を孤独に追い込むには十分な意味を持ったのではないか。

 

最後にチャンネル登録(?)云々の表示も出ていたような気がするので、動画自体は内輪のものではなくて、定期演奏会の宣伝か何かで外に公開する目的があったはず。香乃の死後、動画を非公開にしたのは、香乃の死で演奏会ができなくなったというのも一つにはあろうが、部員たちがいじめに近い、際どいイタズラをしていたことに自覚的だったのではないか。動画の非公開化には責任逃れの意味があったのでは?

 まあ、はっきりといじめと言えるかはやっぱり怪しいよなあ……。

動画を見てからの夢芽

姉のことが余計にわからなくなった模様。最初にガウマが心配した通りに、背負い込むものが増えてしまった。自分が苦しんでいるのに蓬がのうのうとしている様が許せないのか、姉と同じ「わからなさ」が重なるのか、蓬の女友達の振る舞いから疎外感を感じる部分もあってか、蓬に少しばかり嫌悪感を抱くように。

 机と窓とそこから見える青空、レンズを通して見たような視界。この時の描写は前作『SSSS.GRIDMAN』のOPの最後のシーンと構図が合致する。夢芽の「憂鬱」を象徴するシーン。

 体育の前の外廊下、蓬が夢芽に話しかける。OBとの面会の帰路とは打って変わって、夢芽は蓬を拒絶。心配してくれることをありがたく思うのではなく、「蓬君には関係ない」という鋭い言葉。蓬が土足で踏み込んでいる感じも否めないが。

 

ちせの「憂鬱」

香乃についての話を聞き、「いじめの証拠は出てこない。いじめだから」という旨の発言。それって、実際の絶望を味わったことのある人間からしか出てこない言葉なのでは……?

ちせが学校に行かないのは、いじめが一因かもしれない。

所持するバロック(?)がさらに歪に変形してきているが、怪獣の芽生えなのだろうか?

 

蓬の「憂鬱」

第二回のボイスドラマで明かされたのは、上条と母親との関係に気を遣う蓬の姿だったが、それは変わらない模様。しかしながら関係を鬱陶しく思っている節もあるような。

 夢芽を気にかけているが、本人から疎まれるようになり、傷心気味。

 

暦の「憂鬱」

今回も稲本さんと飲みに行く暦。2本の傘の柄の表現が暦の心情を象徴(最初のハート型→タチバナが来てから崩れる)。この辺りの心情はボイスドラマ第6.6回を参照するとわかりやすい。ムジナとの酒の席でも愚痴を言うが、結婚相手を紹介されたこと、親しいようでそうではないという疎外感、話が噛み合わないという居心地の悪さ…。

 

稲本さんとの過去

稲本さんが見せたのは男子トイレにある、何かしらの入ったバッグ。それを見て暦は飛び出す。 

 

 ムジナ同様、暦はやりたいことがはっきりしない気質であることがはっきり描かれた。稲本さんとの過去が強烈に暦を縛り付けるのに、暦はなぜ稲本さんとの関わりを続けるのか……。

 

ダイナゼノンの世界線を説明する鍵

そんなこんなで足並みの揃わない四人はうまく連携が取れず、ムジナ、オニジャ操る怪獣に苦戦。今期初めての敗北の危機が訪れる。そんな中、上空から赤い閃光を放ってグリッドナイトが登場。怪獣に対峙する。

 ここにおいて、『SSSS.DYNAZENON』の世界がどのようなものかおおよそ明らかになったと言えよう。グリッドナイトは、前作の敵役(アカネのパシリ)であるアンチがグリッドマンの力をコピーしてヒーローに転身した姿(但し、サムライキャリバーによるなら「本物」)。彼はコンピュータワールドの怪獣であったから、現実世界には存在し得ない。したがって、今作の世界線が(任意の)コンピュータワールドであることはほぼ確定したと言えるのではなかろうか。

 では、具体的にはどのような世界なのか。以下、簡単に見解を述べる。

 

登場の仕方と意味

前作では「太陽からオーブが落下してきて青空で弾ける」表現がグリッドマンが外部からやってきた存在であることを象徴していたように思う(うろ覚えェ…)。この表現に照らして考えるならば、「赤い閃光を出して太陽から落下してきた」グリッドナイトも外部の世界の存在に当たることになる。前作と符合するロケーションが、違う地名(ツツジ台駅→フジヨキ台駅)や違うカラーリング(高校の校舎自体は恐らく構造も同じで、モデルは同じ。但し壁面の素材とその色が違う)*2で用いられていることもこの点を理解するのに役立つだろう。

 

空/宇宙の描き方から見る世界

前作とは異なり、今作には電子回路の天井が存在せず、第三話より、宇宙空間が存在することが確認されている。しかしながら、グリッドナイトの存在に見るように今作もまたコンピュータワールドの世界と見られる。前作の最終話において、ツツジ台から世界が新たに広がっていく描写があったが、それと同じく「(アカネのような)神、創造主を必要としない世界」であると考えるのが、今のところは合理的だろう(次項でも触れる)。

 

誰のための世界か

 前作のツツジ台世界は、アカネが自分自身の鬱憤を晴らすために作った「理想郷」であった。従って、彼女の気に入らない存在は、怪獣による破壊で消すことができたし、彼女の采配次第で野外行事のための地域など、必要なものを生み出すこともできた。怪獣を使えば損壊した街並みの修復や、人々の記憶消去もでき、(グリッドマンが来るまでは)アカネの望む「日常」を繰り返すことができた(「退屈」ではあったが)。つまるところ、アカネが神になれる世界であった。

 対して、今回は誰かが格別の受益者になる構造はしていない。怪獣が暴れ回ることで損壊した街並みは、自然修復することはない。更にシズムによるなら、怪獣は様々の軛から人々を解き放つ存在であり、それを育てるのは人間*3の感情。「憂鬱」な感情に支配された人間がそう望むことで怪獣を育て、社会を破壊させている、そういう構図が出来上がる。

 そこには、世界に干渉する他者を想定する必然性はない。仮にありうるとするなら、現実に酷似した世界に(人々の感情を食って成長する)「怪獣」というファクターを打ち込んだら、どのような反応が生じるか、それを観察したがる奇妙な科学者ぐらいだろう。また、仮に創造主が破壊衝動の持ち主だとしても、その行動は合理性にかける。単に社会の破壊を望むならば、アカネがしたように最初から強力な怪獣を創造すればよいはずだ。

 

 受益者がおらず、世界への干渉者がいる必然性がない。この点や、前項の内容を鑑みるならば、今作は「神や創造主を必要としない世界」であり、ほぼ完全に自立したコンピュータワールドと考えるのが適切だろう。加えて、グリッドナイトは外部の存在として描かれている可能性が高いから、少なくともアカネやグリッドマンのいた世界ではないと言える。

 

残された大きな謎

・怪獣の育つ要因は分かったが、では怪獣はどこから生まれてくるのか?(バロック(歪な真珠)が関係?ダイナゼノンと怪獣の頻出の間の関係は?)

 

書き足りないが今回はここまで

*1:自分を取り巻く現実と少なからず向き合っている点で、空虚な現実逃避を続けたアカネとは違っており、(逃げることで生じる)「退屈」よりも(向き合うことで重荷を増す)「憂鬱」を当てるのがふさわしいと判断した。

*2:東京都立上井草高等学校。今作は実物に近いカラーリング

*3:世界がコンピュータワールドであることから、レプリコンポイドコンポイドであると推察され、厳密な人間ではないが、便宜的に人間と呼ぶ

SSSS.DYNAZENON 第五話視聴メモ

このシリーズ記事も四回目、物語も折り返しに近づき、各登場人物の過去が次第次第に深堀されてきました。

初回の記事はこちら↓

cyber-moon.hatenablog.jp

 

第五話:[恋人みたいって、なに?]

漂うラブコメの波動。蓬と夢芽の恋愛フラグ。毎回のオニジャ瀕死ノルマ。そして水着回。今回は夢芽の姉の過去、稲本(旧姓)さんと暦の過去・現在、ちせの抱える問題が取り上げられました。怪獣優生思想の目的についても、以下で整理していきます。

 

夢芽の姉(香乃)の過去

今回、夢芽と蓬は、合唱部OBの瓜田と副部長に接触。その内容を整理すると……

 

・瓜田の限定公開の動画によるなら、姉(香乃)は合唱部ではよく笑っていた

(前回のOGの「明るい性格」との発言はある意味では正しいことになる)

夢芽の前で笑顔を見せなかったのは何故なのか?家族に見せる顔と合唱部員に見せる顔があまりに違っていたのは何故?

・副部長があくまで噂だとは断りつつも、香乃の死が「事故ではなく自殺」であると告げる

 

・プールで恋人がふざけ合って女性が転倒するシーンでは、夢芽のトラウマがフラッシュバック。姉は水門から水路に転落して水死したことが示唆される。

 

香乃の歪みを感じる描写が増えてきた。家庭と学校、どちらで見せた顔が本当のところの香乃の顔かは不明瞭だけれども、現状の家庭の綻びを鑑みるに、自分が思い浮かべた可能性は以下のようなものに。

 すなわち、夢芽にとっては円満な家庭に見えていたかもしれないけれども、実際の所は家庭の綻びを香乃が繕っていたというもの。上辺を取り繕っただけの、家庭崩壊的な状況は香乃の死によってさらに均衡が崩れたという線で説明ができる。家族の仲を取り持とうとした香乃は、「家族」に縛り付けられた状況にあった。高校の合唱部では辛うじて自分らしくいられた(仲間と笑い合ったり、積極的に合唱に取り組めた)が、それでも家庭の閉塞感は拭うことのできないものだった。崩壊寸前の家庭、その閉塞感に嫌気がさして自殺に至った。

(かなり詰めが甘い気はするが、今のところはこんな感じか)

 

稲本(旧姓)さんと暦の過去・現在

中学生時代、夜の学校で稲本さんがガラスを割り、暦がそれを目撃するシーンが前回(?)に確かあった。

過去の回想

今回の回想において、過去の稲本さんの屈折した性格が露見。暦を試すかのように「ガラスを割ったことを誰にも言わないんだね」「良いものを見せてあげる」と不穏な笑みを浮かべる。

 「ガラスを割ったのがバレたら退学になるかもしれない」云々の話などと合わせ、ここから伺えるのは、表向きは優等生として振る舞いながらも、裏では非行に走る稲本さんの姿。(思春期とは言え、かなり歪んでますねぇ。過去に何があったのやら。)

 いずれにせよ、中学時代との稲本さんとの関わりが暦をニートに追い込んだという点は否定できない。稲本さんが今の明るい雰囲気に変わる(中学時代とは打って変わった、明るい髪色やフランクな話し振り)裏で、暦の人生が代償にされたのかもしれない。

 

二人の現在

稲本さんは久しぶりに暦と会った時、「結婚してから戻ってきた」と言い、食事に行くことを約束。今回は街中の居酒屋で酒を酌み交わした。

以下、気になる点を挙げる。

・稲本さんが気持ちよく酔っ払うのに対し、暦は箸も酒もあまり進まない様子。稲本さんは明るい口調だけれども、暦は終始少し暗い雰囲気。形を変えて中学時代の不穏さを引きずっている印象。

・結婚して苗字が変わったことは言うものの、新しい苗字を言わない。挙句、「どうして結婚したんだろう」と言う始末。結婚からかなり時間が経っているとは言え、男女二人で飲みにいくことにも全く抵抗を覚えてはいない。

 

稲本さん、実はDVをする夫から逃げて帰郷したとか、そういう複雑な事情を抱えてたりする?離婚したいけど相手が同意しないからできないとか?現在進行形で問題を抱えているのでは?

 稲本さんにとっては、中学時代も現在も、暦がありのままの自分を受け止めてくれる関係性が心地よいのかもしれないが、

*1そのことによって暦が背負うものがどんどん膨れ上がっているように感じる。

 

ちせの抱える問題

最初から不登校であることが明瞭であったものの、その問題の根深さが透けて見える今回。第三回のボイスドラマだったり、今回のプールの件だったり、常に明るい雰囲気で話してはいるものの、前かけにアームガードという特徴的な服装、その意味は個性を反映したものには留まらなかった。

 更衣室で夢芽と会話するシーン(このシーンは夢芽のトラウマ的な過去へと回想を繋げるための導線の役割も担っているわけだが…)。夢芽は、ちせが水着になってもアームガードを外さないことに気づく。

 理由は単純で傷を隠すため。恐らく自傷行為の傷だろう。不登校の理由は不明なものの、自傷行為に及ばないと解放される気分がしないほどの重荷を負ったのではなかろうか。

 

怪獣優生思想について

かなり理性的な雰囲気でもって振る舞っていながら、遂行するのは一種のテロリズム

 早く帰ることだったり、温泉に浸かることしか頭にないムジナの様子、怪獣について包み隠さず語るシズムやジュウガの様子(ジュウガは打算的だが、対照にシズムは自分の興味で行動)、ガウマを倒すことしか眼中にないオニジャの様子。個々人向く方向はてんでバラバラ(ボイスドラマ第5.5回での東京ビーチランドでの自由行動もそれを象徴)。

 優生思想との名前とは裏腹に、過激な雰囲気は普段の振る舞いからは微塵も見えないし、怪獣の思想に対して狂信的な雰囲気も感じ取れない。戦闘狂のオニジャ以外はガウマとの戦いにあまり執着しない様子。第三回で「怪獣の思想で動いている」との説明がガウマからされたが、使命感を帯びている様子もなく、戦闘後すぐに解散する様子からも、怪獣を操ることを単なる雑務としか感じていない印象

 シズムは人が他者に縛られたり、自分を縛ったりしながら生きていることを指摘。その上でそこから生まれる情動が怪獣を育てると分析怪獣を使って人々を様々な軛(くびき)から解き放つことが第一義的な目的なのだろうけど、それにしては行動が思慮に欠けるし恣意的すぎるのではないだろうか?

 「龍のオブジェを託した女の人にまた会いたい」という明確な目的を帯びたガウマ(迷走しがちだが)とは違って、(前作で感情任せに怪獣を生み出したアカネとも違って)理性的な振る舞いをしながら行き当たりばったりに見える行動をするさまは大変気味が悪い

 

その他感想など

他の方が書かれたサイトなどを見ると、初回に漂うかなり陰鬱な雰囲気が、第二回以降の明るい雰囲気によって打ち壊されたとの感想を抱いた人をちらほら見かける。私も同じく第二回を見た時はせっかくの設定を台無しにしちゃったか……、と残念な気持ちだった。

 しかしながら、物語を追うにつれ、その指摘は不適切な気がしてきた。

 今作では、怪獣について説明するシズムが、今のところ世界の案内人的な役割を果たしている。前回も今回も、シズムが語ったのは(高校や恋人の関係について)「表面上は自由に見えても、気づかないだけでかなりの不自由が存在している」ということだ。第二回以降の描写の仕方もこの発言と合致する。

 表面上は気丈に振る舞っているし、実際のところ、主要人物の四人(蓬、夢芽、ちせ、暦)は次第に打ち解けているが、その裏で通奏低音として各人の問題が存在している(蓬は親の再婚問題、夢芽は姉の過去に縛られ、ちせはまだ理由は見えないが不登校、暦は稲本さんとの過去を引きずる)。

 現代っ子は昭和の不良青年ほど分かりやすい非行には走らない(稲本さんみたいに学校の窓ガラスを割るような行為はほぼ見かけない)し、家庭の問題も見えづらくなってきている。現在の社会に巣食う見えにくい軛を描こうとしているのであれば、この描き方はかなり現実に即しているとの評価ができるのではなかろうか。

 

 以上に挙げたような「世界の憂鬱」に向き合う点で登場人物たちの目的は一致しているが、問題そのものに真摯に向き合おうとするダイナゼノン陣営と、問題を生み出す社会そのものを衝動的に破壊しようとする怪獣優生思想陣営。二つのアプローチはかなり対照的だ。

*1:第六話でこの線はほぼ否定される

SSSS.DYNAZENON 第三話&第四話視聴メモ

更新が遅れましたが、ほぼ需要がないと見られるこの記事をアップロードするのも3回目。引き続き物語を追っていきます。

(※投稿者の主観などを多分に含みます。なお、投稿者の気になる点が中心となりますので、本筋からはかなり話がそれるかもしれません。その点ご了承ください。)

 

過去記事はこちら↓ 

cyber-moon.hatenablog.jp

cyber-moon.hatenablog.jp

目次↓

 

第三話:[裏切り者って、なに?]

物語の一つの鍵として、ガウマと怪獣優生思想の関係性、ガウマが戦う理由が見えてきた。ガウマの語りを通じて、合わせて物語に新たな可能性が生じた。

物語の鍵?:ガウマの戦う理由と怪獣優生思想

・ガウマと怪獣優生思想のメンバーらは5000年前は仲間だった。あることをきっかけに怪獣の思想に生きる彼らを制止せんと、ガウマは彼らを「裏切る」ことになる。

・ ガウマは5000年前にある女性から龍のオブジェを託される。怪獣使いらは怪獣を通じて「常識の外」にいたから現代に生き返ることになったため、その女性も同じく生き返っていると推測される。

→女性に会うために、女性とガウマのつながりを象徴するダイナゼノンに搭乗して怪獣と戦う。

 

因みに、原作で龍のオブジェが登場した回ではミイラも登場。設定は5000年前の文明人で姫を探しているらしい……。ガウマさん、あんたミイラだったのか……?原作ストーリーとの繋がりが気になるところではあるが、如何せん原作未視聴なものでして…

 

死者が蘇る?

ガウマが、怪獣を通じて「常識の外」にいたから生き返った、と語る場面。「そんなことがあるんですね…」と反応する夢芽、浮かぶアンクの知恵の輪……。

第一回の記事で触れたこととは思いますが、エジプト十字(アンク)は命のシンボル。此岸と彼岸の境界を越えるための通行証で、時にこのアンクの力を信じるものは一度だけ生き返ることができるとか*1

知恵の輪が象徴するのは、「姉の過去に縛られる夢芽」になるわけで、この場面での知恵の輪の描写は、後に夢芽がダイナゼノンを使って姉を蘇らせようとする可能性の示唆?

 

アンクの知恵の輪は、元は夢芽の姉、香乃が所有していたもの。姉がそれを所持していたというのはまた別の意味合いを持ちそうなもの。

 

第四話:[このときめきって、なに?]

見るからにラブコメの波動を感じるこのタイトル。少しずつ、怪獣について、怪獣優生思想について明らかになってきました。夢芽のお姉さん、香乃についても実像がおぼろげながら浮かんできました。

 

怪獣優生思想と怪獣

交換留学生として蓬らの通う学校に潜入するシズム。怪獣の言葉がわかるという彼から、怪獣についての説明があった。

・怪獣は所与の存在であり、人々の気持ちが育てるもの。

・「人を縛りつけるものからの解放」が目的にある。

→やはり人を押さえつける負の感情、オーイシマサヨシさんの歌う「世界の憂鬱」こそが怪獣を生み出し、育てる因子であると言えそう。ともあれ、怪獣優生思想が人間社会の軛を取っ払った世界、人間の負の感情は自由に解放された怪獣の生きやすい世界を作ろうとしている点は明白に。

 

この発言の文脈と前話の「怪獣使いは「常識の外」にいたから生き返った」という発言を照らし合わせると、世間の常識から逸脱した存在、「世界の憂鬱」の中に生きることが怪獣使いたるための必要条件になるのでは?常識の世界に馴染みつつあるガウマが怪獣を操れないというのもこの理解ならば或いは?(少しずれているやも?)

 

夢の姉、香乃について

夢芽は、前話で顧問に紹介された金江先輩とカフェで会う。姉の死は5年前と言っていたから、金江先輩は大学生か社会人といったところか。前回の顧問の先生といい、今回の先輩といい、あまりしっかり香乃のことを見てこなかった印象。顧問の「特に気になる点はなかった」はわかるにしても、金江先輩の「明るい性格」という発言が実際の香乃の性格と異なる点は特に気になる。

香乃は周りに人がいて孤立はしていない代わりに、常に孤独だったのではなかろうか?すなわち、周りにちゃんと人はいて、日常的な会話できる相手もおり、見かけ上は何も問題を抱えていない、寧ろかなりありふれた優等生みたいな子だった。けれども、実際は彼女の抱えている問題に気付いてあげられる人はいなかった、ということじゃなかろうか?

仮にこの点を踏まえるならば、彼女は「事故」じゃなく自殺した可能性もある。死亡時にアンクの知恵の輪を握っていたのも、現世を諦めて来世を望んだ結果だとすれば、ある程度説明もつくかもしれない。

 

第三話、第四話を通じて/その他気になる点

筋書きとは結びつかないけれども、個人的には風景の描写などの点がどうしても気になってしまう。

前作SSSS.GRIDMANを意識したロケーション

とりわけ気になるのが前作と近似するロケーションだ。フジヨキ台駅*2、夜間のコンビニ*3、稲本さんと暦が再会した路地に積まれた瓶ケース*4、シズムと夢芽、蓬が会話した屋上*5。前作と完全一致とはいかないまでも、前作の雰囲気を匂わせるようなロケーションの選定がなされていることも事実。前作との関連性をどうしても考えてしまう。

 

反対に対比的な描かれ方をされているシーンもある。三話でバーナドドンとともに宇宙空間まで行くシーンだ。前作で初めて空中戦をした回では、世界観の手がかりとして、主人公らが空の上の電子回路に気づく描写がなされていた。対照的に今回は宇宙空間が存在する。

前作最終話では、グリッドマンによって新たに全世界が構成されていく描写がなされていたから、宇宙を描写することによって必ずしも電脳世界ではないことを示せたわけではない。しかしながら、ロケーションが部分部分近似する中で、名称などが一致しない、という点において、一先ず別の世界線であることは明示されよう。前作と何らかの接点は見出せそうだが……。

 

ダイナゼノンを操縦するのに必要な資質は?

三話のガウマによるなら「怪獣使いの素質があるから操縦できる」とのことになるが、勘違いだった模様。初回、第二回に参加しなかった飛鳥川ちせがダイナソルジャーを操縦できることが判明した。しかしながら、果たしてライセンス的なものが不要なのかというとそうでもなさそう。少なくとも何かしらの個人的な問題を抱えた人間であるという点では、ガウマ含め五人とも一致している。

ダイナゼノンは怪獣ではないわけだが、では怪獣使いと五人とで違う条件はなんだろうか。ずばり、そのまま負の感情に流されることはなく、問題に向き合う姿勢を見せていることではなかろうか。ここに、負の感情にそのまま流される怪獣優生思想とダイナゼノン操縦者との線引きができるような気がする。

暦と稲本さんの関係性

三話で中学が一緒だったことが明らかに。稲本さんは非行少女で、暦は彼女のガラス割りの犯行現場を目撃。割と仲は良かった印象ではあるけれども、彼女が暦に与えた影響はどれほどのものだったのか。暦が高校以降不登校になった理由はどこにあるのか等々。

 

今回も書きすぎた印象だが、ここまで。

*1:wikipedia参照。真偽の程は不確か。

*2:二話で夢芽と蓬が別れるシーン。前作のツツジ台駅に一致する駅?

*3:第三話でガウマに不信を抱いた四人が集まるシーン。前作一話のシーンと近似する印象

*4:サムライ・キャリバーさんがラムネ瓶を斬ってビー玉を取り出すシーンの背景に近似?

*5:カメラの位置どりや屋上の構造が前作の校舎と近似