SSSS.DYNAZENON 第十二話視聴メモ[最終回]

4月の放送開始から2ヶ月ちょっと。全12話でダイナゼノンの世界にピリオドが打たれました。登場人物各人は自身の抱えていた憂鬱を越えて、各人が明日へと漕ぎ出したところで終幕。第10話で雑に決着をつけてしまった感じは否めないものの、余すことなく設定を使い切り、綺麗な終わり方をしたように思います。語りすぎることも無粋とは承知しつつ、ダイナゼノンについて今回も語っていきます。

 

 

第十二話:[託されたものって、なに?]

今思えばかなり露骨なタイトルだったように思うが、全体を振り返ってみても「分からなさ」を伏流にした作品だったなあと。最終回を迎えても分からないことばかり、語られないことばかり。敢えて語らないでシンボルを使ってそれとなく語りかけてみたり、敢えて全く語らなかったり。

 

語りあうことと語らないこと

物語の核は語られないまま、最終的にわかったのはぼんやりとした全体像だけ。大事な部分はそれとなく語りかける。想像力でもって補うことでようやく答えを得る。そういう作品だった。もっとも、ジャンプ的なアニメに世間が順応しすぎたせいでこういった作品が貴重に見えてしまうのかもしれないが……。

 

拳で語り合う終局

人間を殺すことを目指すオニジャに、怪獣使いとしてしか生き方を見つけられなかったムジナ、怪獣の世界の未来を見たいというジュウガ(ガウマとの過去に縛られていることも事実)がシズムのガギュラに融合。再び集結したダイナゼノン陣営の面々と拳で語り合う最終局面。

 似たもの同士だが違う道を歩み始めた暦とムジナ、かつての兄貴分に執着するジュウガと否定するガウマ、蓬・夢芽と何も語らないシズム。戦闘狂のオニジャはさておき。

 蓬が怪獣使いの能力の片鱗を見せた第八話の伏線もしっかり回収。最終話が近づくにつれて「ロマン」しか言っていないと思われるかもしれないが、展開といい、戦い方といい、幕引きといい、少年期のロマンがたっぷり詰め込まれたラスボス戦だった。

 

ガウマが大切にした三つのこと

ガウマの言う「世の中には絶対に守らなきゃいけないものが三つある。約束と愛と…」。第一話から、大事な局面でしばしばガウマが口にしてきた言葉だが、三つ目は直接的には語られないままガウマとのお別れが訪れる。

 ガウマを乗せたまま機能停止したダイナゼノンはゴルドバーンやグリッドナイト同盟と共に別世界へ。側で聞いていたはずの2代目も何も語らず。先述の「敢えて語らない」という描き方が用いられた部分。主人公の蓬はシズムとの対話の中で自分なりに三つ目を見つけるわけだが、それは後述。

 

自由って、なに?

最終決戦から三ヶ月後のフジヨキ台高校では文化祭が開催。蓬の1-3はホラーをテーマにしたカフェのよう。例によってクラスで浮いている夢芽はシフトをすっぽかして屋上の隅に。いつものメンツに急かされて、蓬は夢を迎えに行く。「連れてってよ」と夢芽が手を差し出したのを見て回想。

 最終決戦の時、怪獣使いの力を使う中で蓬はシズムと対話していた。「分からないものだね」「あと少しで無上の自由が手に入るところだったのに」と、自ら理を作って自らを縛りつける人間の不自由なあり方を否定。対照的に、蓬は(自らの自由でもって)「掛け替えのない不自由を手に入れるんだ」という答えを見つける。不自由であることに自分の生き方、人間らしさを見出したわけだ。

 一切の軛を取っ払った究極の自由。対照に不自由さにこそ生き方を求める姿勢。人間味にかけるアナーキズムと、人間味溢れる不自由と。両者平行線のまま話は終わる。「分からなさ」は抱えたまま、苦楽に向き合うことを決心する蓬。

 最終決戦といい、蓬との対話といい、シズムは多くを語らない。表情も映らず、感情の表出もない。蓬と対話するにあたっては背中を向けたまま。彼の思考には言葉で語った以上のものが含まれていたのだろうか?よく分からない存在のままシズムも退場する。どこまでも人間味に溢れていたダイナゼノン陣営の各人や怪獣優生思想の他3人に比べるとかなり異質な存在。「分からないものが怪獣」と語っていたが、(単純に怪獣の種を自分の中に隠し持っていたことだけではなくて)まさにシズム自身が「怪獣」なのだと感じさせる対話だった。

 

かけがえのない不自由/刻印

蓬が夢芽の手を取るシーン、蓬が初めて「夢芽」と呼ぶシーンに象徴的に「掛け替えのない不自由」が描かれる。「不自由」を選ぶ生き方を受け入れ、積極的に選んだ蓬や夢芽。孤独を恐れずに自分をさらけ出すことに決めたちせと、恩人という立場を利用しコネで社会に出ていくことにした暦(図太い生き方よねぇ)。そうした生き方を生んだのが、ガウマの巻き込みで経験した「不自由」であることも事実だ。

 怪獣との戦闘の中で自分が避けてきた過去や現在と向き合わざるを得なくなる。逃げ場も与えられず、ただ残酷に自分の「憂鬱」と向き合うことになる状況。 巻き込み事故の被害者ではあるものの、ガウマのお節介なまでの真っ直ぐさに助けられてきた面々、逆にそうした「憂鬱」がガウマを助けてもきた。「巻き込んでしまってすまない」「ありがとう」この言葉に12話の戦いの全てが集約されているように感じる。

 結局のところ、5000年後の現代に怪獣が出てきたのが、姫がガウマにダイナゼノンを託したせいか、それとも怪獣優生思想らの無念によるものかは分からない。しかしながら、姫の託した「不自由」であるダイナゼノンが、他の四人やグリッドナイト同盟の二人との出会いという形でガウマに救いをもたらしたのも確かだ。

 

 蓬、夢芽、ちせ、暦の四人が体験した「不自由」は刻印という形で彼らに残った。蓬、夢芽には、ガウマとお揃いの稲妻型の傷ちせは自らが刻んだ、親友ゴルドバーンのタトゥー、暦は直接的な形ではないが、タチバナや稲本さんに売りつけた恩という形で(苦笑)。ガウマの存在を心に刻んで、これから四人はそれぞれ苦楽を越えていくのだろう。

 ところで、ガウマ初登場の時の鳥の鳴き声と、最終話の河川敷で蓬の聞いた鳥の鳴き声は同じだったがあの対比は何を意味したのだろうか?

 

GRIDMAN UNIVERSEのその後

ガウマの絶命と共に機能停止し、ガウマの亡骸を入れたまま、ダイナゼノン(形態はダイナレックス)はグリッドナイト同盟の二人やゴルドバーンと共にハイパーワールド(?)へ。最後のカットでは機能が復活した状態でこちらに振り向く。OPで振り向くダイナゼノンとどこか似ている。画面が暗転してNEXT GRIDMAN UNIVERSE GRIDMAN×DYNAZENONの文字。GRIDMAN UNIVERSEには、まだ続きがあるようだ。

 ガウマの亡骸と魂が入ったままのダイナレックスは何に反応して機能を復活したのか、それからグリッドナイトと今後どういう戦いに繰り出していくのか、気になるところである。

 

 

この一連の記事を読んでくださった方がどの程度いるかは存じませんが、 もしいらっしゃったのであれば、最後までお読みいただき大変ありがとうございました。もしよろしければですが、SSSS.DYNAZENONへの感想などをコメントに書いていただけると大変嬉しいです。